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2010年12月01日

世界の選手が驚く「日本のルール」 - 小宮美雪(Badzine)

(※本ページは当サイトTOPICS内で、バドミントンに関する「言論プラットフォーム」とし、言論の場を提供し競技の普及・活性化を目指すものとする。)


世界の選手が驚く「日本のルール」・・・

「日本の脇田・江藤組ってスーパーシリーズには出てこないの?」
「日本では、ナショナルメンバー以外はスーパーシリーズには出られないルールがあるんだよ」
「何の為に そんなルールがあるの?」
海外の選手からの質問に言葉を失ってしまった。

確かに、なぜ日本だけナショナルメンバー以外はスーパーシリーズに出られないのだろうか?


 現在日本のナショナルメンバー以外で一番世界ランクが高いのは、女子ダブルスの脇田/江藤(岐阜トリッキーパンダース)。

 ランクのみならず、実力も備わっている。
2009年6月のマレーシアオープン、脇田/江藤が中国のアテネ五輪金メダリスト ヤン/ツァオをファイナルで勝利。また、今年に入っても当時世界ランク6位のマレーシアのトップダブルス ウォン/チン
に勝利している。
 そして、2010年8月12日付けの世界ランキング、女子ダブルスで脇田/江藤が14位にランクイン。
当時の日本ナショナルメンバーは、前田/末綱(5位)、藤井/垣岩(7位)、松尾/内藤(15位)、松友/高橋(19位)。20位以内に全員揃う中、ナショナルメンバーではない脇田/江藤が日本ペアとして3番目の位置につけた。
 その後も彼女達の快進撃は止まらず、インターナショナルチャレンジやグランプリ大会で好成績を収めている。にも関わらず、スーパーシリーズに出場できないというルールがあることに、世界の選手やバドミントン関係者は驚きを見せる。

 このルールというのは、日本バドミントン協会の『国際大会出場基準』だ。
ナショナルメンバーのみがスーパーシリーズへの出場権を持ち、ナショナルメンバーではない彼女たちは出場できない。また、出場できる国際大会も日本ランキングにより出場できる回数が決まっており、彼女たちの場合は52週中10大会+大阪インターナショナルチャレンジのみが許されている。

しかし、この基準は『日本独自のもの』であり、『世界の標準』ではない。

そのことを示す海外の事例を紹介しよう。
 今年の6月に行われたインドネシア スーパーシリーズ。
インドネシアからエントリーした選手は総勢118名。当時、ナショナルチーム(PBSI)に所属している選手は50名前後で、半数以上がナショナルチームの選手ではない。
 アテネ五輪金メダリストのタウフィック ヒダヤットをはじめ、北京五輪金メダリストのキド/セティアワンも今やナショナル選手ではなく、プロ選手として独立しての参加。ミックスのベテラン、ヴィタ・マリッサもナショナルチームを抜け、女子ダブルスでタイの選手と母国のスーパーシリーズに参戦した。マレーシアや中国では、北京五輪後にナショナルチームを抜けた選手たちが個々にスポーツメーカーと契約を結び、スーパーシリーズ大会に参戦している。
 以上のような状況から、『ナショナルメンバー以外はスーパーシリーズに出られない』という日本独自のルールに選手や記者たちが驚くのも無理はない。

 特に、海外選手達にとってはスーパーシリーズに出られないということは重要な問題であるため、関心をよせている選手が多い。
海外選手にとって、用具などのブランドスポンサーやその他スポンサーと契約をする際、できるだけ大きなバドミントン大会で好成績を残すことと上位ランクにいることが交渉において重要であるため、
「実力ある選手の活動を狭めるような規定を設けるのは、自分達の国では考えられない。それは、日本ではスポーツ選手への権利違反ではないの?」と話す選手もいる。

このような規定ができた理由を、数人の関係者から聞いた話をまとめると、
「ランクを上げたいのは皆同じ。ナショナルの合宿や公式行事中に、ナショナル以外のメンバーがスーパーシリーズに出場可能であると、ナショナルメンバーにとっては不利となる可能性があり、そうならないようにしたいという配慮がある。過去にはナショナル選手以外でもスーパーシリーズに出場可能だったが、その時に実際起こった事例を元に、こういった規定ができた」ということだそうだ。

 スーパーシリーズに出られないだけではなく、出場回数が制限されている点も、ナショナルメンバーのランキングを超えないようにと考えられているらしい。

今回の脇田/江藤のように、規定内で何度か優勝などの好成績を収めていくと、ナショナルメンバーと世界ランクを競うことはできる。しかし、過去52週中に規定で定められた回数の出場をしている場合、新たな試合には出られない。その一方で、ナショナルメンバーは、会社や協会が認めれば何度でも出場できるのである。


 現在、脇田/江藤の世界ランクは15位。8月以降は14~18位の間で推移しており、スーパーシリーズに参戦してもいいレベルであることは間違いない。いくつかのスーパーシリーズへの出場機会を与えることは、ナショナル選手にとっては不利となるのだろうか?
海外からコーチを高額で雇い入れ、ナショナル選手を育てているのであれば、それ以上の成績を出せばよいのではないか?と私は考えている。


 さて、2011年の春からは2012年のオリンピックに向け、オリンピックレースが始まる。
日本バドミントン協会のウェブサイトに掲載された「2011年の国際大会出場基準」は、2010年と同様、ナショナル選手以外のスーパーシリーズ参戦は許されていない。2011年から始まる“プレミア”大会やスーパーシリーズに参戦できず、出場回数を制限されることは、ナショナル選手以外にはオリンピックへの道を閉ざされることを意味すると言っても過言ではないだろう。

ナショナルチームに人数制限がある以上、オリンピックを目指せるレベルの選手でも選考から外されるのはやむをえない。しかし、選手選考の基準があいまいである以上、惜しくもナショナルメンバーからもれた選手たちに、自費参加でオリンピックを目指せる回数の参戦を認めてあげていただきたい。


「オリンピックに出たと出ないでは人生が違う。また、メダルを取ると取らないでもその後の人生は違ってくる。スポーツ選手なら誰でもオリンピックに出たいし、メダルを取りたいと思う。自分のためだけでなく、支えてくれた家族、コーチ、ファンへの恩返しでもある。その為に辛い練習にも耐えて、努力してるんだから!!」と海外選手たちは言う。

「オリンピックに出たい」というスポーツ選手の自然な願望を閉ざすことなく、ナショナル相当レベルの選手もオリンピックを目指せるように、2011年には寛大な選択が成されることを切に願っている。



●小宮美雪
世界のバドミントン情報を発信するウェブサイトBadzineの日本担当。
「バドミントンで世界をつなぎたい!」をキーワードに、海外選手の講習会通訳や海外合宿アレンジ、海外選手のエージェント、サイト翻訳など、日本と世界をつなぐ仕事を幅広く手がけている。

ヨネックスオープンにてバオ・チュンライ選手と小宮氏
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